吾妻ひでおは、1970~1980年代、コミックの世界にSFと美少女と不条理を持ち込んだ。
現在のアニメ、コミック会の一線級のクリエーターに対し、直接、間接ともに、絶大な影響を与えた作家であろう。萌えの元祖、みたいな書評を見たことがあるが、ちょっと違うような気がする?1970~80年代オタクは、今のオタクよりはインテリだったと思うから。みゃあちゃんは、10年以上前にルーズソックスだったけど、渋谷を闊歩していた変な生き物みたいに、頭悪そうじゃないしね(笑
ギャグ作家の宿命か、この20年ほどは精神的にも非常にキツイ状態になっていたようだ。同時代の作家として一世を風靡した鴨川つばめは、結局、消えた漫画家になってしまった。
2度の失踪 自殺未遂 ホームレス生活と、アルコール依存症による強制入院を経験したとの事。他の作品で妙に画が荒れているのが有ったのも納得した。そのハードな日常が描かれているのが本作。
この、失踪日記を見て、これらのハードな状況を乗り越え、天才が完全復活したと確信した。上記の、非常にキツイ状況を、実に客観的にクールな視点で描き、しかも“笑える”作品に昇華しているのが兎に角 凄い。
さしづめ、吾妻ひでおは、帰ってきた漫画家だ。
巻末の対談で、とりみき が書いているように、作画においても、最盛期のレベルを取り戻していると思う。
本書では、3ヶ月に及ぶアルコール依存症での入院生活の最初の一ヶ月でで終わっている。早く続きを読みたい!
くれぐれも、断酒でお願いします。先生!
(当時、Amazonに書いた書評を推敲しました)
Web上などで見つけた情報を元に、吾妻ひでおの失踪日記の売り上げ部数の推移を調べてみました。
2005年3月08日 第1刷発行
2005年3月24日 第2刷発行
2005年3月30日 読売新聞(石田汗太記者)6万部
2005年4月05日 北海道新聞 9万部
2005年4月08日 第3刷発行
2005年4月16日 第4刷発行
2005年4月23日 たけくまメモ 10万部突破 4刷
2005年5月01日 読売新聞 14万部-6刷
2005年5月09日 第5刷発行
2005年5月18日 第6刷発行
2005年6月06日 第7刷発行
2005年6月19日 朝日新聞(イーストプレス広告) 17万部
2005年7月01日 第8刷発行
2005年7月23日 第9刷発行
2005年12月24日 第10刷発行
たまたま、書庫を整理していたら、アルコール中毒の酷かった時期に連載されていた、エイリアン永理を発見。コマの外に、一言二言、当時を振り返ったコメントが載っているのですが、失踪日記で当時の状況を知ったあとでは、重みがありますね。
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