新築や大改装でオーディオルームを1から作る機会に恵まれた場合。
まず、最初に追加工事で出来ることと、難しいことを分けて考えましょう。
反射・吸音はアクセサリー類をつかって後でも出来ます。そもそも部屋が出来てみないと、反射処理や吸音が必要かどうかはわかりません。それより遮音を第一に考えましょう。特に低周波の遮音については、質量で押さえ込むのが最も効率的です。結局、鉄筋コンクリートで充分な吸音材と遮音シートを張った丁寧な工事をするのが一番安上がりだと思います。魔法瓶の原理と同じで、間に空気層(吸音材入りでも良し)を入れることも効果的です。家の外への遮音だけでなく、家の中への遮音も忘れずに。後付けの遮音は高くつきますし、なにより部屋を小さくします。私のオーディオルームは内臓が共振するレベルの大音量を出しても、家の外に漏れる音は皆無です。
遮音さえしっかりやれば、そののちに吸音や反射・拡散で部屋の音響を改善することは比較的容易です。遮音が駄目で思ったようにオーディオを楽しめないと、オーディオルームを作った意味がありません。
余談ですが、音響パネル関係では、まれに物理をまったく無視した謳い文句のアクセサリ類があるのでご注意を。私が見たことのある、ある音響パネルは、2005年くらいの楽器フェアで、数畳の狭いスペースにパネルを張詰め、数万円の安物のミニコンポを持ち込んで、重低音が再生可能。(ミニコンポのスピーカーで物理的に出るわけがない)と、寝ぼけたことを主張していました。音響工学に対する最低限の知識を持っていない自称プロが多数参入しているのがこの業界の困った点です。
しっかりした低音は床がしっかりしていないと出ません。低音を足で聞かずに済むように、床も出来るだけ強固にしたほうが良いでしょう。拙宅のオーディオルームは、快適性は諦め、コンクリートにPタイルのみです。長岡鉄男さんの方舟と同じですね。現在は欧州のオーディオメーカーで活躍するスピーカー設計者の友人に、「床から低音が伝わってこないのが良いですね。」と褒めてもらえました。
電源の配線も後で変更するのは困難です。複数の系統を入れることを忘れないで下さい。デジタルとアナログ、小消費電力と大消費電力など、電源の分け方のやり方もいくつかありますが、電源系統が多いと自由度が増えます。どこにコンセントを配置するかも、重要です。私はAV用に全部で4系統用意しました。
プロジェクターを使う場合は、プロジェクターの発するノイズの影響は大きいので、プロジェクター用の独立電源も欲しいところです。
調光器や蛍光灯のノイズは大敵。少なくとも、調光器は避けましょう。PLCも精神衛生上よろしくないので、有線LAN環境も忘れずに。
ケーブル類の埋め込みについては、主義主張があるでしょうが(工務店やインストーラーは薦めるに決まっている)、HDMIが1.3aで新しい規格のケーブルが採用されたように、埋め込み工事後のリスクがあります。将来的には各種ワイヤレス技術が投入されるでしょうが、現状では映像系については、コンポジット(は、さすがに不要かな?)S、コンポーネント、HDMIと複数の配線が必要になると思います。私はケーブルの埋め込みはしませんでした。
部屋の寸法比については、諸説あるようですが、大学の研究室でやっているレベルに達しているモノを見たことが有りません。シミュレーションは、影響があると思って組み込んだ変数に対する答えしか出してくれません。㎜単位の設置で音が変わるオーディオの世界で、完全なモデル化は困難ではないでしょうか?
まあ、感覚的に天井は可能な範囲で高く。部屋の長辺と短辺の比が整数倍になるのは避ける程度。でしょう。現実問題では、部屋の大きさや寸法は別の要因で制限されることが多いと思います。
2007年に家を建てて、充分な遮音性能を持つオーディオルームを確保出来た後、部屋に対する不満は殆どありません。上記の様に、音響パネルの類をいくつか導入して音質の改善は行うことができました。
中でも効果を感じたのはヤマハのパネルで、部屋全体のSN感が向上しました。QRDのSKYLINEは一枚だけスピーカーの間に設置して試したことがありますが、発泡スチロールの付帯音がついてあまりよいと思いませんでした。設置場所は枚数によっては印象が違ったかもしれません。スピーカーの中央で拡散しすぎるのは良くないのかもしれません。一方、同じ場所に置いたQRD BADは音がすっきりする効果を感じ、数枚買い足して使用しています。QRD BADは市場に無いようですね。SKYLINEは安く自作可能(BBCが資料を発表しているので個人ユースは問題ないでしょう)なので、ある程度の数設置したらどうなるかは試してみたいと思っています。
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