JORDAN JX92 自作箱でフィンランドバーチ合板とロシアンバーチ合板の音を比較

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何時もお世話になっている、米屋材木店さんから、新しくロシアンバーチ合板という素材が入荷したという情報を頂いたので、早速テストしてみました。

綺麗に梱包されてきました。これなら、輸送中に板同士がぶつかり合って、傷む心配はありません。

フィンランドバーチ合板との最大の違いは、勿論、原産国ですが(笑 木目方向が短尺方向に伸びているフィンランドバーチと異なり、ロシアンバーチ合板は、国内で普通に流通しているラワン合板などと同じように、木目が長尺方向に伸びています。背の高い棚や、スピーカー工作だと、サブロク合板で板取された既存の設計を流用する時に便利だと思います。また、フィンランドバーチ合板の表面には制作上に出来ると思われる微細な傷があるのですが、ロシアンバーチ合板にはそれがありません。手で触ったときの感覚が微妙にしっとりしているようです。そのせいか、カットした面の毛羽立ちが少ないように思います。

今回は、できるだけ正確な比較実験ををしたかったので、ロシアンバーチとフィンランドバーチで同一寸法のボックスを2組作って、同じスピーカーユニットを使用してスピーカーを2組作る事にしました。E.J.JordanのJX92を2組所有しているので、これを使う事にします。最近のMADE IN CHINAのEsoteric Audio Design扱いのJX92Sではなく、Jordan氏自らがハンドリングしていた英国製の時代のものです。流石に2Wayスピーカーを2個作るのは大変ですが、これくらいの高級フルレンジスピーカーを使えば、それなりの説得力を持つ実験になるでしょう。素人が出来る実験では、最大級に贅沢なものではないかと思います。

※2010年12月追記
EADに問い合わせたところ、JX92Sは以前はScanspeaksで製造していましたが、CHINAの工場に移った時に、最終的な組立はインドの工場に切り替えたそうです。メタルコーン部分については、一環してイギリスで製造しているそうです。

標準箱として公開されている何種類かの設計の中から、サイズも手ごろな8リットルタイプの密閉箱を使うことにしました。フロントバッフルをネジ止めして交換できる設計にして、後日、別のスピーカーに変更できるような工夫も組み込んでおきました。

小型の箱ですから、写真のように、平らな台(接着剤でくっつかないもの)の上で、スイコで直角をとりながら、圧着固定してくみ上げました。接着剤は何時ものタイトボンドです。速乾性で接着力も強力。硬化したあとは、ヤスリで削れるので、塗装時に邪魔になりません。

接着時の圧着には、ラチェットバークランプを利用しました。ハタガネより作業性が良いです。圧着力はそれほど強くないですが、このくらい大きさの箱ならば充分でしょう。

私は、基本的に底面は1枚の板で構成するように板取りしています。これでがたつきを排除できます。接着剤が完全に乾いたところで、オービタルサンダーで、微妙な段差を取り、最終的に240番くらいで表面を綺麗にしました。フィンランドバーチ、ロシアンバーチともに表面がかなり綺麗なので、今回もツキ板などを使わず、そのままオイルフィニッシュで仕上げます。塗料は、今回もオスモオイルのクリアです。まだ使い切ってないので^^;

吸音材は、羊毛を使用したサーモウールを使いました。建材として、もっとも高価な部類の断熱材ですが、スピーカーの吸音材として使用したときの音質も非常に優れています。
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以下、比較試聴編です。思っていたより大きな差異がありました。

制作完了から、2週間。たっぷり音出しして比較が出来たので、レポートする事にします。スピーカーユニットの個体差によるものかもしれないと心配になったので、お互いの箱にマウントされているユニットを入れ替えて実験もしています。

フィンランドバーチ合板とロシアンバーチ合板では、微妙な木質の違いか、製造時の製法や接着剤などの他の材料の違いか、予想以上に音質の違いがあることが判りました。

「どちらが、より優れている。」という単純なものではなく、一長一短やキャラクターの違いと判断しました。私も、今後、使いこなしや目的とする音によって、より適した素材を選択することになりそうです。本レポートは、あくまで、今回製作した8リットルの密閉箱+JORDAN JX92によるレポートで、両者の音質差を断言するものではありません。異なる構造のエンクロージャーやスピーカーユニットの組み合わせでは、また、別の結果が出るかもしれません。

以前、ビンテージスピーカー PH2132Eの箱を作った時にも、

> 明るく透明感のある響きが特徴です。この明るい響きは、高解像度感の演出にも使えるはずです。
とレビューを書いたのは、今回の実験の上でも、同じ様に確認できました。

フィンランドバーチ合板の魅力は明るく、開放的な音です。バーチ材同士、ロシアンバーチ合板と比べても、明快で伸びやかな音が出ます。音楽を聴いていて、非常に気持ち良いのです。シンプルなアコースティックギター+ボーカルのレコードなどをくと、その魅力がよく判ります。

一方、ロシアンバーチ合板と比べると、低域が若干弱く、ちょっと薄く(軽く)聞こえる事があります。低域がボーボーと不明瞭になるような感じではないので、低音の質が悪いという事ではありません。また、小型フルレンジ+8リットルの密閉箱ですから、低音といっても、重低音ほど低い帯域の音を言っている訳ではありません。

ロシアンバーチ合板の方は、タイトな低域が魅力です。適度な密度感があり、より下の帯域まで低音を支えてくれます。フィンランドバーチ合板でソースによって感じることがあった、低音が軽くなる感じが改善されます。特にドラムやシンバルのパルシブな低音が入ってくると、フィンランドバーチ合板と差が出てきました。音色の特徴は、全帯域で、明るさは若干押さえ気味。冷静な音というべきでしょうか。

タイトな低域と書いたのは、箱鳴り等による、量感豊かな低音というのとは違い、引き締まった感じという意味です。

今回は密閉箱による実験ですが、バスレフ箱やバックローデッドホーン等の低音を増強させる仕組みの箱では、違った印象が出るかもしれません。また、フィンランドバーチ箱でも箱の補強を工夫する事により、ロシアンバーチ合板のような、よりタイトな低音を期待する事も可能ではないかと思います。小型スピーカー&フルレンジ一発で、小音量でボーカルや生ギターを中心とした音楽を気持ちよく聴くには、フィンランドバーチ合板の方が魅力的なスピーカーになりそうです。今回のシステムでも、そういう印象を受けました。

両者を組合わせて作るとしたら、Willson AudioのSystem8のような、2WAYスピーカー+スーパーウーファーのような2ボックス構成のスピーカーのウーファーボックスをロシアンバーチ合板、小型2WAYスピーカー部分をフィンランドバーチ合板で作るような使い分けが考えられると思います。ロシアンバーチのエンクロージャーに、フィンランドバーチ合板のバッフル板という組合わせも面白いかもしれません。

ロシアンバーチ合板、フィンランドバーチ合板ともに、米屋材木店さんで、適価で正確なカットをしていただけます。

試聴環境

アンプ、CD PLAYER : QUAD 77Integrated Amplifier + QUAD 77CD Player

ケーブル類 : Interconnect QUAD QUADLINK Cable, SPAKER CABLE AET 6N14

E.J.Jordan JX92 ロシアンバーチ合板製キャビネット
ロシアンバーチ合板製キャビネット
JX92 フィンランドバーチ合板製キャビネット
フィンランドバーチ合板製キャビネット

左がフィンランドバーチ合板、右がロシアンバーチ合板。
オスモオイル、エクストラクリアー塗布後2週間経過した状況。この後、より良い風合いに変化していきました。

テストに使った音源の一部。

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2025年4月追記
ロシアの侵略戦争の関係か、市場からはロシアンバーチ合板は消えているようです。
フィンランドバーチ合板も世界的な木材価格高騰のあおりを食って、かなり高価になっている模様です。

コメント

  1. miya より:

    面白そうな実験ですね。
    箱の材質でどれほど音質が変わるか興味津々です!

  2. YAS より:

    ラワンとバーチ合板の比較なら、全然違うのは明らかなのですが、同じバーチ材系での違いですから、私のDIYやJORDANのユニットの偏差以下かもしれません。大差ない、なら大差ないで、情報としては価値のあるものだと思います。バッフル取り付け前の箱を手で軽くたたいたときの音は大差ないようでした。
    現在、TV用にAVアンプにエージングをしていますから、もうしばらく経って落ち着いたら、JORDANと相性の良いQUADのアンプと組合わせてレポートしようと思います。
    普段のTV用のスピーカーはPMCのTB1ですが、TVで音声帯域だけ聞いている分には、メタルコーンの共振が多少あっても、フルレンジ一発の良さというのは、やっぱり捨てがたいものと再確認してます。

  3. フィンランドバーチとロシアンバーチ JORDAN JX92 自作箱 比較試聴編

    フィンランドバーチとロシアンバーチ JORDAN JX92 自作箱 製作編 から2週間。色々と比較が出来たので、レポートする事にします。スピーカーユニットの個体差によるものかもしれないと心配になったので、お互いの箱にマウントされているユニットを入れ替えて実験もしています。 フィンランドバーチ合板とロシアンバーチ合板では、微妙な木質の違いか、製造時の製法や接着剤などの他の材料の違いか、予想以上に音質の違いがあることが判りました。 「どちらが、より優れている。」という単純なものではなく、一長一短やキャラクターの違いと判断しました。私も、今後、使いこなしや目的とする音によって、より適した素材を選択することになりそうです。本レポートは、あくまで、今回製作した8リットルの密閉箱+JORDAN JX92によるレポートで、両者の音質差を断言するものではありません。異なる構造のエンクロージャーやスピーカーユニットの組み合わせでは、また、別の結果が出るかもしれません。 私は、4年前に、最初にフィンランドバーチ合板でスピーカーを作ったときに、 http://rasenkan.blog.so-net.ne.jp/2005-08-15> 明るく透明感のある響きが特徴です。この明るい響きは、高解像度感の演出にも使えるはずです。 とレビューを書いたのは、今回の実験の上でも、同じ様に確認できました。 フィンランドバーチ合板の魅力は明るく、開放的な音です。バーチ材同士、ロシアンバーチ合板と比べても、明快で伸びやかな音が出ます。音楽を聴いていて、非常に気持ち良いのです。シンプルなアコースティックギター+ボーカルのレコードなどをくと、その魅力がよく判ります。 一方、ロシアンバーチ合板と比べると、低域が若干弱く、ちょっと薄く(軽く)聞こえる事があります。低域がボーボーと不明瞭になるような感じではないので、低音の質が悪いという事ではありません。また、小型フルレンジ+8リットルの密閉箱ですから、低音といっても、重低音ほど低い帯域の音を言っている訳ではありません。 ロシアンバーチ合板の方は、タイトな低域が魅力です。適度な密度感があり、より下の帯域まで低音を支えてくれます。フィンランドバーチ合板でソースによって感じることがあった、低音が軽くなる感じが改善されます。特にドラムやシンバルのパルシブな低音が入ってくると、フィンランドバーチ合板と差が出…

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