QUAD 405のメンテナンス

AUDIO

所有するQUAD 405 2台を自分で修理することにしました。うち1台はノイズが出て使用できない状態でした。

QUAD 405は1975~1982年、405-2は1982~1993年にかけて生産されていた古い製品です。たとえ保存状態が良くても、電解コンデンサはほぼ全てのの個体で寿命を迎えているはずです。

2台とも同時期のもので、トランスに1976年生産の文字がありました。405の中でも初期型に当たるもので、アンプ基板のバージョンは同一。電解コンデンサは、現状の動作に関わらず、全交換が前提になります。

405の筐体内部。左側に見える巨大な円筒形2個が電源のブロックコンデンサ。左右にアンプ基板が2枚見えます。

入力はDIN。スピーカー出力はプッシュ式のコネクタで、最近のスピーカーケーブルの太さを考えると使いにくですが、当面は変更するようなことはせず、オリジナルを尊重します。

QUAD 405電源コンデンサ
QUAD 405電源コンデンサ

電源の電解コンデンサのうち1個は液漏れを起こして、危険な状態になっていました。この状態では、充分に整流した電流をアンプ回路に送ることが出来ず、アンプの動作が不安定になったり、アンプそのものが破壊される危険性があります。

電源のコンデンサは、コンデンサバンドごと取り外します。アンプ基板への入出力は、ギボシ端子で処理されているのでメンテナンス性が良いです。

たまに、メンテナンスを考えた部分をハンダ付けで直結して音が良くなった。等と言ってる人が居ますが、メンテナンス性を犠牲にするのは、素人工作的で感心できません。リアパネルのゴムキャップが着いている穴の部分、ここにRCA ジャックを増設している改造を見かけますが、この穴はアンプ回路をヒートシンクに結合しているネジにアクセスするための穴なので、ここにRCA、ジャックをとりつけると、あとあと面倒なことになります。

工業製品は、ちゃんと意味のある設計をしているものですから、そういう意味を理解せずに改造するのは、エンジニアの質が問われます。(そう言えば、某修理業者の405の修理事例で、筐体の無き止め対策で貼られているフェルト状の素材を、市販のオーディオアクセサリ類と勘違いして、取り外してしまっているのを見た事があります。)

QUAD405 アンプ基板
QUAD405 アンプ基板

アンプ基板。シリアル番号9000番まで使われた、M12368 ISS7 というタイプです。オレンジ色と茶色の円筒が、電解コンデンサ。古い時代もので、現代のアルミではなく、ベークライトのケースの中に充填したタイプのものです。このコンデンサが劣化すると、ノイズの原因になります。確実に劣化している部品です。QUAD 405と405-2は生産期間が長く、回路図そのものにも、何度も変更が加えられており、基板にも使用部品にも、いくつかのバリエーションがあります。

古いOPアンプを現在の高性能のものに変更すると、音質的な改善が得られるでしょうが、音が近代的になりすぎても嫌なので、今回は交換しないことにしました。ソケット取り付けなので、簡単に実験出来そうですね。

QUAD405 交換用電源コンデンサ
QUAD405 交換用電源コンデンサ

右がオリジナルのERIEの電源コンデンサ。10000μF 63V耐圧です。左が、交換する英国製のコンデンサ。このメーカーは英国のコンデンサメーカーの流れをくむもので、修理用として、正規部品といってよいものです。半田タグタイプで、古い英国のハイ・ファイ製品を修理するために用意しているもの。規格は同一ですが、これだけ小型化されています。

アンプ基板上のコンデンサは、今回はニチコンのMUSEを選択しました。(オリジナルのRoedersteinは、現在はvishayの傘下にあるようです)この部分の部品は、QUADの歴代のアンプも、色々なメーカーの部品が使われています。

交換後。電源ブロックコンデンサが小さくなって、内部がちょっとさみしい感じになりました。

新しいコンデンサに合わせたサイズのコンデンサバンドを取り付けるには、筐体に穴を開け直す必要があり大変な作業になるので、今回は、オリジナルのコンデンサバンドと新しいコンデンサの間をシリコン充填剤で固めることで処理しました。最近のシリコンコーキング剤は知りませんが、昔のコーキング剤は固まる過程で金属を腐食させるガスを出したので、筐体を閉じる前に、シリコンの完全硬化を待ちました。

さて、メンテナンスがすんだ405は、ノイズがなくなったのは当然ですが、QUADのアンプの中でも渋い音の405の特徴を維持したままで、よりSNが良くクリアな音質となり、同時に優れた駆動力が復活しました。小型エンクロージャーのJORDAN WATTS FLAGONやJR-149(LS-3/5Aのバリエーションモデルと言える製品です)が朗々と鳴り出して、私はQUAD 405の音に惚れなおしてしまいました。

「QUAD 405で鳴らせないようなスピーカーは設計思想が間違っている。」というのが私の持論で、アンプに過大に依存する作りのスピーカー設計も、そういう極端なスピーカーや対応したアンプの事を高級品と勘違いしているマニアも嫌いなのですが、その考えが正しいと再認識しました(笑

組となる QUAD 44に付いては、内部パーツを確認したところ、コンデンサ類は、現時点では性能を維持しているようなので、当面は部品交換をせずに、そのまま使うことにしました。

一般的なサイズの製品(SONY DVP-S900ES)と比べると、QUAD製品のコンパクトさがよくわかると思います。ところで、私の405 x2、ヒートシンクの色が若干違ったのですね。最近まで気づいていませんでした。ヒートシンクを塗装したロットが異なるのでしょう。

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