私のメインシステムで使用しているパワーアンプは消費電力300W程度の真空管アンプ(EAR861とEAR534)です。暑い時期に、発熱量の大きいアンプを使うのは、あまり合理的ではありません。
そういったわけで、夏の間に使用するアンプをどうするかな?と、悩んでいた所に、QUAD 50Eを所有していることを思い出しました。
QUAD 50Eは英国のQUAD社が1965年に発売した業務用のモノラル・トランジスタアンプです。QUADの製品としては、初めてのトランジスタアンプ(初めてのトランジスタを使った製品はFM TUNER用のマルチプレクサ)で出力50W。特に低能率や低インピーダンスなスピーカーと接続するのでなければ、充分な出力です。
すでに業務用として広く使われていたQUAD IIの置き換えの意味もあったのか、50Eの筐体の大きさはQUAD IIとほとんど同じ大きさです。BBCモニタースピーカーの一部には、このアンプを格納するための空間が用意されているものもあったので、重要な要求項目だったのかもしれません。
業務用として、広いスピーカーのインピーダンスに整合させる為、真空管アンプの様に出力トランスを搭載しているのが特徴です。インピーダンスの切り替えは、専用の出力コネクタの配線で、50E本体の出力トランスの結線を替えることにより行います。BBCやアビーロードスタジオ等、英国の放送・業務用の第一線で使われたアンプです。日本ではシュリロ貿易が輸入し、一般のオーディオファンも好んで使っていたようです。
1968年に、QUAD50Eと同じサイズの筐体にステレオアンプを組み込んだのがQUAD 303で、これは民生機として発売されています。(若干仕様を変更して業務系の現場で使われた実績もあるようです)
今回、私のオーディオルームで組み合わせるスピーカーは、基本設計は同時期のタンノイのスピーカーをBBCパテントのキャビネットに入れたスタジオモニター LOCKWOOD MAJOR HPD385。まさに、英国のスタジオモニターとして純正組み合わせです。プリアンプには、QUADの現行製品の真空管プリアンプ QC24P(現在はEAR864)を使用しました。新しい真空管プリアンプと古いトランジスタアンプの組み合わせです。コネクタは現在では入手が困難なので、コネクタ無の中古を購入するのは避けた方が良いでしょう。私もコネクタ無の中古を安く入手したあと、コネクタを購入し、プロにメンテナンスをしていただくまで数年を要しました。
これが、私が考えていた以上に良い音でした。勿論、メンテナンスをしていて、コンデンサ等は現在の性能のモノですが、半世紀前の基本設計のトランジスタアンプから、こんなに歯切れの良い音がするとは思いませんでした。音になまった感じはありません。音の見通しもよく、音場表現ではモノラルアンプの良さが出ています。現状、低域はちょっと不足気味かな?電源ケーブル周りなど、少し改善すれば、もっと改善出来そうです。QUAD 303は、柔らかい音なので、同系統の音かと思っていたけど、だいぶ違う様に思います。QUADというと405で使われたカレントダンピング回路の印象が強く、それ以前の回路のアンプを軽視していたかもしれません。
発熱量も少ないし、今のところ、今年の夏アンプはこれでいこうかと思ってます。
その後、BANDORの5cm メタルコーンフルレンジスピーカーを2本、五角柱のキャビネットにマウントしたPENTACHORDスピーカーと組み合わせたところ、これも大当たり。良質なメタルコーンフルレンジの音質と合わせて、スピーカーの口径が信じられない音量と低音で、最高に反応の良い音を楽しませてくれました。
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