オーディオルームの音質改善方法に音響パネルの設置があります。国際フォーラムで開催される東京インターナショナルオーディオショウも、最初は酷い音のブースが多かったのですが、だんだん、音響パネル導入のノウハウが確立していって、部屋の音質が良くなっていきました。
まず、音響パネルを導入することによって、何が改善されるのかを考えてみましょう。
下記が単純化して書いた部屋の中でスピーカーから出る音と反射音の関係です。

スピーカーから出た音は直接音としてリスナーの耳に届くものと、部屋の壁に反射して反射波としてリスナーの耳に届くものがあります。実際には、反射波はもっと複雑で部屋の奥に反射するもの、反対側の壁に反射するもの、複数回反射して耳に届くもの、いろいろありますが、一番簡単なスピーカー側の壁に反射した音のみを描いています。
壁に反射する音波はスピーカーの軸上から外れた方向に広がるものなので、直接音より多少小さいものとしましょう。その分、青い矢印は少し細く書いています。壁の音の反射率が100%と仮定すると、直接音より小さいものの、スピーカーから出た音が違う角度で耳に入ってくることになります。この音は壁に反射している分、少し遅れて耳に届くこととなり、スピーカーから出た音を出来るだけそのまま聞くためにはマイナス要素となります。
次に部屋に吸音材を置いた時を考えてみましょう。

壁の音が反射する部分に吸音材を置いたとします。吸音材の効果により、反射音の音量は小さくなり、反射波の悪影響は少なくなる。というのが部屋に置く吸音パネルの効果です。実際には、吸音材は全ての周波数を均一に吸音することが出来るわけではないので、こんなに単純ではありませんが、ここでは一番シンプルな状況を想定します。
この吸音材を置く場所は、部屋の寸法からも計算できますが、一番簡単なのは手鏡を部屋の壁に設置して、鏡を見て、スピーカーが見える位置を探すのが一番簡単です。
次に吸音材ではなく拡散パネルを置くことを考えてみましょう。QRDパネルやSkylineの様な音響拡散体を考えてください。

拡散パネルは音を四方八方異なる方向に反射させることができます。実際には図の様に単純ではないのですが、四方八方に反射されることにより、それぞれの方向の音のエネルギーも小さくなる。というのが理屈です。勿論、これらの拡散体もすべての周波数を拡散してくれるわけではありません。
音響パネル、購入前に効果の確認が難しいのが悩ましいところですが、事前にテストすることも可能です。上記で説明したような場所にウールのセーター等、吸音効果のありそうなものを設置し、反射面の影響を確認するのです。テストで効果がありそうなら、より性能の良いオーディオ用の音響吸音材や音響拡散体を導入すればよいでしょう。
スピーカーの真横等、すぐ近くに吸音材や拡散パネルを置く方法(流儀?)もあります。スピーカーに一番近いろころで対策したい。という理屈なのでしょうが、それらのパネルが室内の新たな反射面になるという事を考えると、個人的にはあまりやりたいとは思いません。が、ケースバイケースでしょうね。私がスピーカーの最も近い場所で吸音対策をするのであれば、スピーカーの直前の床で吸音か拡散したいと思います。
実際にこういった場所にパネルを設置しようと思うと、そこに本棚があって、充分に吸音できているのでこれ以上の対策は不要とか、窓ガラスが盛大に共振しているので何とかしたい。とか、いろいろなケースが考えられると思います。私のオーディオルームの場合は左右の間隔を大きくとっていることもあり、左右の壁からの反射の悪影響はそれほど感じないので、スピーカーの背面の処理を中心に対策しています。
私が愛用しているオーディオパネルの一つ、ヤマハの音響パネルは内部に異なる共振周波数のヘルムホルツ共鳴管を複数個配していて、広い周波数帯域で優秀な吸音特性を持っています。また、開口部の形状が音の拡散の効果も持っているようです。私の部屋の環境に限れば、私が試した幾つかの評判の良い吸音素材による音響パネルより、本製品の方が圧倒的に効果(室内のSN感の向上)を感じることができました。お勧めです。性能の割には安価だと思います。
これとは別に部屋全体の共振周波数対策の吸音処理や、部屋のコーナーの吸音処理の話もありますが、別の機会に説明したいと思います。(私も専門家ではないので…)
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