音のよいスピーカースタンドというのはどういうものでしょう?スピーカースタンドから音楽が再生されるわけではないので、私は余分な音を発生させなず、スピーカーをしっかり固定して支えることが出来るスピーカースタンドが音の良いスピーカースタンドだと考えます。また、リスナーとスピーカーの位置関係を適切なものに保つ働きもあります。
現代的な設計の小型スピーカーを上手に鳴らす為に一番大切な事は、頑丈で鳴きの無いスタンドに設置する事です。勿論、平面性が悪くてガタついていたり、強度が足りなくてぐらぐらしているのは論外として、現代的な音作りのスピーカーの場合、スピーカー以外の部分から音が出るのは好ましくありません。従ってスピーカースタンド固有の鳴きや振動による演出は好ましくありません。指で弾いて、ビーンとかカーンとか共振音が出るスピーカースタンドはNGです。
私は、Sonus FaberのMINIMAやElecta Amatorに、専用スタンドを使用しています。これは、支柱にウォールナットの無垢材、天板に鉄、土台に大理石を使っていて、かなりの響きが出ます。一方で高価な複数素材が組み合わされていることは、音質的に工夫されている証拠でしょう。それがミニマやエレクタアマトールの音質に対して効果的で、音質をアップさせているのは間違いありません。ただし、これは、メーカーが巧みな音作りをした結果で、汎用品のスピーカースタンドで、他のスピーカーに同じような効果を求めるのは困難ではないかと思います。 そういった効果を謳う市販のスピーカースタンドについても、懐疑的に見ています。
さて、話を共振音のないスピーカースタンドに戻しましょう。私の手元に、店頭処分品を安く購入したメーカー不詳の鋳鉄のパイプのスピーカースタンドがありました(今は売却処分したので過去形)。このスタンドは重量があり、しっかりした構造なのですが、支柱が防振対策をしていない中空の鉄のパイプの為、強い“鳴き”が発生します。スピーカーの音量ちょっと上げで支柱に触れると、盛大に振動しているのがわかります。
このように、支柱が中空のスピーカースタンドは、内部に乾燥した砂か鉛粒等を充填すれば防振と重量アップが出来て音質アップが可能です。砂は天日で良く干すか、屋外でカセットコンロと捨てても良い様な安いフライパンで煎れば良いでしょう。ちょっと手間ですね。鉛は結構高価ですし、現在は入手難で処分も大変。それで、私も躊躇していました。
最近、面白いものを見つけて、非常に効果的だったので、ご紹介します。DENON扱いのミュージックツールズというメーカーの 振動防止コンパウンド FNA007は、直径3~4mm程度のやわらかい樹脂の粒です。角ばっていない形状で、素材の音もし難いやわらかい樹脂なので、それなりに考えられた素材だと思います。これをパイプの中に詰める事により、中空パイプの鳴き止めが可能です。細かい粒子が互いにこすれあうことにより、振動を熱に変換し吸収してくれるのは、物理学の基本ですね。小石や砂利では期待できません。
私のスピーカースタンドは、粒をパイプの1/3くらいまで詰めたところで、鳴きが無くなりましたが、念のためパイプ全体に詰めました。今思うと、残りはグラスウールでも詰めればよかったかも?直径8cm、長さ55cm程度の支柱2本に使って充分に余ったので、容積的には、それくらいを目処に考えてください。少々値段は張りますが、最大のメリットは、本製品は軽い為、スタンドの重量を大きく替えない点だと思います。

現在このスピーカースタンドにはPMCのTB1をセットしています。対策前後で、低域はもちろん、音の鮮明さが大きく改善しました。価格を考えると、ちょっとしたインシュレーターより遥かに安価で本質的な改善をしてくれます。スピーカースタンド以外にも、中空構造のあるオーディオラックの防振や自作などでも効果的なアイテムと思います。現在所有しているスピーカースタンドへの対策としてお勧めです。
私は、別途、スタンドの天板もTB1にサイズをあわせたコーリアンに変更し、音質を改善しています。
ELACのLSFILLERはミュージックツールズのものと同じようなタイプだと思います。1セット1200gx2(容積3~3.5リットルくらい)とのことで、量はミュージックツールズより少ないと思います。ミュージックツールの製品同様、スタンドの重量を大きく替えずに防振できるメリットがあるでしょう。
価格重視ならジルコンサンド。非常に粒子の小さな砂なので、こぼさないようにご注意。スピーカースタンドの支柱の中に入れるときは、一度ビニール袋に入れた方が良いかもしてません。室内でこぼれると悲惨です。乾燥させる必要が無いのは大きなメリットですが、スタンドはかなり重くなるはず。
スピーカーの高さと耳の位置関係ですが、一般的にスピーカーのツィータの位置をリスニングポイントの人の耳の高さかそれより少し下に来るようにするのが良いと言われています。
スピーカースタンドの天板に充分な強度がなく共振してしまう場合は、手軽にMDFなどの追加天板を乗せる(接着、ネジ止め)などして異種素材の重ね合わせによる共振防止や、天板の裏側に鉛シートなどの防振シートを貼り付けることにより、共振を低減し音質の改善が可能です。
コメント
>“スピーカースタンド 自作 設計” の検索でたどり着く方が多いようです。自作ネタではないので、申し訳ない限り。
まさに上記の用件でアクセスしました(笑) はじめてコメントさせていただきます。
中型のスピーカー用の背の低いタイプのスタンドを自作予定で、シナアピトン合板やバーチ合板で自作はどうかと思っていたところ、YASさんのページにたどり着きました。
>指で弾いて、金属音など固有の音がするスピーカースタンドは好ましくないのです。
まさにそのとおりですね!
中型のスピーカー用スタンドは、金属の固有音が音に乗っかってしまうスタンドや、制振しすぎてよい響きまで殺してしまうようなスタンドばかりで選択肢がないんです。そんなわけで木材での自作を考えています(米屋材木店さん、よさそうですね!)。
先のエントリの『フィンランドバーチとロシアンバーチの比較試聴』で、「ロシアンバーチ合板の方は、タイトな低域が魅力」とありますが、高域の伸びやかさ(高域のレンジの伸び)についてはいかがですか? 自分の音の好みからいって、ロシアンバーチでの自作を考えたいところですが、「高域が押さえ込まれることで低域が出ているように感じられるのでは?」と懸念しています。
細かなところで恐縮ですが、教えていただければ幸いです。
(まあ、同じバーチ材だから微小な差だとは思うのですが)
euro様、コメントありがとうございます。こういうフィードバックをお待ちしていました。
仰るとおり、中型スピーカーに適したスピーカースタンドで、響きを活かしたタイプのものは、あまり見当たりませんね。カエデなど、楽器を作るのに使うような素材の角柱で3 or 4点支持のシンプルなものを考えてはいかがでしょうか?製品としては、岡山のオーディオ101がカエデ材のスピーカースタンドを製品化しています。私も15年以上前にタンノイ用に購入しました。
ロシアンバーチは、高域の伸びについては、フィンランドバーチに劣ります。高域が延びないので、その分低域がしっかりしたように聞こえる訳ではなく、低域はたしかに確りしているようです。
早々のお返事ありがとうございます。
仔細了解しました。
tannoy使われてたんですね!
私はSGM(SRM)10Bのユニットを使っているManleyのML-10を使用しています。
>カエデなど、楽器を作るのに使うような素材の角柱で3 or 4点支持のシンプルなものを考えてはいかがでしょうか?
私もバック工芸社の「Basic4312」を参考に作ろうと考えていました。現状では、柱となる部分にフィンランドバーチ合板を成型し40mm程度厚みを持たせたものかカエデ材を使用し、底板にシナアピトン積層合板という構成がいいかなと思っています。
オーディオ101のオリジナルスタンドもなかなかよさげですね。各メーカーでさまざまな音作りのアプローチがあり、悩ましいところです。
Manleyよいですね。確か、ネットワークは独自のものになっていましたね。
私がオーディオ101のスタンドを組合わせたのは、Little Gold Monitorです。
個人的には、パック工芸社のスタンドは意図的に響かせすぎだと感じました。スピーカーのもともとの持ち味との相性では、劇薬的に作用する事があると思います。
私ならば適当な角材(8cm角程度、実際にそういったものも自作したことがあります)か、合板で角材を作り、中に砂などで重量アップ&防振対策とすると思います。
>Manleyよいですね。確か、ネットワークは独自のものになっていましたね。
ご存知でしたか。
ご指摘どおり、ネットワークはMastering lab(Doug Sax氏)のオリジナルです。
>個人的には、パック工芸社のスタンドは意図的に響かせすぎだと感じました。スピーカーのもともとの持ち味との相性では、劇薬的に作用する事があると思います。
まさにそのとおりです! 出音もそうなんですが、あそこが使用している針葉樹の材は叩くと相当響くんですよね。そんなわけで、構造上は同じでも、軽い材ではなく比重が重いものを使用してはどうかと思った次第です。サイドプレスなどで体験したのですが、底板の干渉が少ないことは有利かなと感じていまして・・・。
>私ならば適当な角材(8cm角程度、実際にそういったものも自作したことがあります)か、合板で角材を作り、中に砂などで重量アップ&防振対策とすると思います。
なるほど~。これもいいですね!
検討してみます。
そういえば詰め物はミュージックツールズのほかにエラックとか、サウンドキャビア(不揃い鉄球)というのもあるみたいです。ご参考まで。
http://joshinweb.jp/av/309/2098771766773.html
http://www.network-jpn.com/hificlub21/accessory.htm
このエントリーでも書いていますが、スタンドで音作り。という発想はかなり危険だと思っています。minimaの「専用スタンド」はウォールナットの無垢材を複数枚 組合わせていますから、響くといっても、それなりの強度を確保したものですしね。やはり、プロの仕事です。
ELACも鉄球も存じ上げています。このエントリーで書いたスタンドはすでに充分な重量があったため、鉄球や砂で必要以上に重量アップするのは避けました。ELACとミュージックツールの比較はわかりませんが、価格と容積の比較で、ミュージックツールの方が有利だった上、私の使用環境では充分な鳴き止め効果があったので、推薦する事にしました。
某怪しいケーブル屋(Beldenの正当な評価を傷つけるからやめてほしい)の推奨するスピーカースタンド、家の根太を支える為の建材に見える。