現在のオーディオには無い独特の魅力があることからか、現行商品のオーディオ製品を扱うだけでは、商売として不十分だからか、最近、新規にビンテージオーディオを扱うようになった店が多いように思います。
また、一時期、eBayにビンテージオーディオ製品が出回り、今まで、入手ルートを持っていなかった業者が仕入れ可能になったこともひとつの原因ではないかと思います。まあ、私もその時期にいろいろなものを入手できたのですが。最近のeBayは、以前ほど魅力的なモノは出品されず、昔のように、モノの価値や適正な価格を判っている業者間の売買に戻っているようです。
結果として、そういった古いものを扱う充分な知識を持ち合わせない業者が、適当な商売をしているようです。
たとえば、こんなページを見つけました。
SC Original Speaker RCAユニット入荷!!
RCAのSL123との事です。(今は修正されています。)
では、私のコレクションからSL123を紹介しましょう。SL123はRCAの業務用スピーカーユニットで、有名なLC-1の12吋タイプといった位置づけのモニタースピーカーです。30cmフルレンジとコーンツィータの組み合わせによる同軸スピーカーで、非常に玉数の少ない、珍しいモデルです。
ちょっと文字がかすれていますが、RCA SL123Aの文字が確認できると思います。SL123の後期バージョンがSL123Aの様です。SL123Aではマグネットカバーが省略されています。アメリカ製のスピーカーは、ユニット単体で販売されているものは、スピーカーキャビネットに入れると見えなくなる背面も塗装したり、立派なマグネットカバー(一説には、磁石を大きく見せるためと言う説も?)をつけますが、最初から箱にいれてシステム売りしたスピーカーユニットは、塗装を省略したものが多いです。さすが、アメリカの合理主義?
磁気回路は非常に大型のアルニコタイプということがお分かりと思います。上記の販売店が、SL123と言って販売しているスピーカーとは、お金のかかり方が全く別物だと言うことがお分かりでしょう。
1950年代、永久磁石は非常に高価なものだったため、同一メーカーから販売されている、同一口径のスピーカーユニットも、マグネットサイズで2~3種類くらいバリエーションをつけている例が数多くありました。たとえば、Goodmansの12インチ同軸スピーカーは、マグネットのサイズ順のTriaxiom 212, 412, 612といったラインナップになっています。
さて、上記サイトで紹介されている、小さなマグネットの12インチウーファーは、RCA社の一般的なスピーカーシステム(それでも、当時、非常に高価なものだったはずですが)のウーファーと思われます。もっと小型のマグネットもみたことがあるので中間サイズのものです。私が知っている範囲では、このタイプの12インチスピーカーユニットのコーン紙は、カーブは同一ですが、上位モデルについては、オルソン博士の文献にも残っているように、エッジ近傍に質量を付加して、エッジによる周波数の乱れを押さえる為の特殊な処理がされています。当然、一般モデルにはその様な手のかかる処理はなされていません。
ツィータについても、写真のサイズから、はっきりしませんが、SL123のツィータはY字型のステーにマウントされウーファーのオフセンターに配置されているので、それをわざわざ2個に分ける意味があるとは思えません。日本人はタンノイやALTECの影響もあって同軸スピーカーが好きな人が多いですしね。
この時代のRCAの一般的な家庭用のスピーカーシステムの多くは30cmウーファーに加え、コーンツィータ2個を角度を付けてマウントし、音が広がるように設計されていたので、故障したツィータを取り除き、有りモノでまとめたものかもしれません?それはあくまで想像。
残念ながら、こういったニッチな世界については、ネット上に情報がありません。詳しい人がネット上で発言することをしないからです。理由は判りますよね?特に、Vintage RCAに関する情報は、マニアが秘匿しているとしか思えないくらい、情報がありません。(私も、あまり、公表するつもりはありません。)
幸いにして、私がビンテージオーディオを始めるに当たり、日本で最高の知識と最高のメンテナンス、最高の真摯さで商売をしている人と知り合うことが出来たので、10数年の短期間にしては、良い実用的なコレクションを手に入れ、素人してはそこそこの知識を手に入れることが出来ました。
おそらく、このお店もそういった、ヴィンテージオーディオ製品に対する充分な知識を持っていないだけで、顧客を騙すといった悪気は無いのだろうと思います。しかし、こういった正しい知識と顧客に対する説明を必要とする分野の商品で、販売店が充分な知識を持ち合わせない場合、商売をする資格があるでしょうか?
たとえば、自分が売ってる絵画についてまともな説明が出来ない画商は商売相手として信用できますか?勿論、ヴィンテージオーディオというのは、骨董の世界に近いものがあるのですから、購入する側も勉強して知識を身につける必要があるでしょうね。
コメント
記事を拝見して私も同じ思いです。あと、
RCAいいですよね。聴いてて普遍というか落ち着きます。